2012年 04月 01日
切り溜め |
今では見かけなくなった古い道具に『切り溜め』と言うのがあります。
明治時代から、大正、昭和の時代にかけて使われていたものです。
字のごとく、切って溜めておく箱です。
サランラップやタッパーがない時代、野菜を切って、乾かないように蓋をして保存しておきました。
沢山の料理を作ったら、器以外に、この箱に入れておき、涼しいところに置いておいたのではないでしょうか。
この切り溜めは重箱とは違って、晴れの場所に出されるものではなく、
台所の隅に積み重ねておかれる物なので、塗は輪島塗などより工程は少なく、
沈金などの装飾はされていません。
切り溜めなどの雑器が作られるようになったのは伊勢地方が発祥です。
伊勢神宮の遷都の度に出る御用材の残りをを利用して、指物の箱類を作り、
木目を活かして弁柄、柿渋、漆などを薄く塗って防水し、
日常雑器を中心に『伊勢春慶』と呼ばれ、全国に広まりました。
戦後はプラスチックの普及により、切り溜めはだんだんと姿を消し、今日に至っています。
五つの箱は、身と蓋が入れ子になり、コンパクトに収納ができるのが、
素晴らしい日本人の知恵です。
by table-harmony
| 2012-04-01 16:50
| 暮らしのエッセンス